多くは語らん
コーヒーを啜りながらジャズを片耳に、右手でペンを走らせ、左手は本をぺらぺらと。
もう最高に優雅。俺が天皇。
深夜テンションも程よく相まって、今の私は本当に気分がいい。
目の前に広がる数式の数々を見て、いつもなら吐き気を催す、いや吐いていただろう。
しかし今はどうだろうか、なんとすらすらと解けるではないか。
これはコーヒーのせいか?ジャズのせいか?
否。
私が天才なのである。
無数に存在する有象無象の彼らと違って、私には才がある。
もはや比較するのも烏滸がましい程に。
と、気付けば手元のマグカップはうっすらと底を見せ始めていた。
しょうがない、もう一夜過ごそうじゃないか。
明けない夜の始まりだ。
私は、もう一度湯を沸かし、心を躍らせた。
ふつふつと聞こえる音が、なんともいえぬ高揚感を私に与えてくれる。
さらば青春。ありがとう人生。
きっと幸せってこういうところにあるんだろう。
まどろみの中で綴ったこの愚鈍かつ滑稽な文も、きっと後から読み直せば伝記となる。
聖書となる。歴史的書物となる。
こんな文を読んでいる者などいないとわかっていても、私は歩みを止められない。
止まらないから、止められないのだ。
人生にセーブなどなく、リセットもなければロードもない。
だがしかし、リタイアはいつだってすぐそばにあるのだ。
だから、あまり深くは考えず、気楽でいいんじゃないか。
疲れたらやめればいい。それだけなのだから。
そろそろ手が疲れてきたので、私の歴史的書物もここで〆とさせていただく。
未来ある少年たちよ、精々足搔くがいい。
ている